1181 仏ヶ崎・苫ノ鼻(大根崎・死骨崎)=釜石市唐丹町(岩手県)車窓からはほんの数十秒の間くらいしか見えない唐丹湾で

1984(昭和59)年に開業した三陸鉄道は、2011年の東日本大震災以来不通となっていたが、2014(平成26)年から最後まで残っていた南リアス線吉浜駅=釜石駅間が復旧し、全面開通している。(つい昨日のニュースでは、不通になったままのJR山田線を三陸鉄道が移管を受けて、北リアス線と南リアス線に分断されている三鉄の線路を、一本でつなぐことで復旧が計られることになったらしい。)

釜石のJR駅の隣にある小さな事務所が駅舎で、そこから線路の下をくぐって端っこにある三陸鉄道のホームに出る。堅気の人たちはみんな仕事に行っている時間なので、ボックス型でテーブルがある車内はまだ誰もいなかったが、徐々に乗客が増えてきた。

いろいろなイベント列車を走らせたりして、経営努力はしているようだが、いかんせん昼間のダイヤがまばら過ぎて、これで湾ごとに降りながら岬めぐりをするのは、なかなかにつらいものがある。釜石発の列車は、8:42・10:57・14:11・16:15 と昼間は4本しかないのである。

先のような事情もあって、結局この線もとにかく釜石から三陸までは下車なしで乗りっぱなしいかなくてはならない。
唐丹(とうに)という地名もその由来はぼんやりしていて、アイヌ語源説もあれば平泉藤原時代から唐船が出入りする密貿易の港であったところからきたとする説もある。
唐丹湾の唐丹町には、三陸鉄道の南リアス線唐丹駅がある。釜石から乗った南リアス線は、平田(へいた)駅を過ぎると、長い石塚トンネル(4,670メートル)を抜ける。抜けたところが唐丹である。

唐丹湾の北岸の先端が大根崎で、湾内に仏ヶ崎と苫ノ鼻のふたつの岬があり、南岸の先端には蒜島があり、その南に死骨崎がある。けれども、湾奥からは大根崎も死骨崎も見えない。死骨崎から西に走る尾根の稜線が、釜石市と旧気仙郡三陸町(現在の大船渡市三陸町)との境界になっている。

南リアス線の車窓から、湾内が見えるのは、石塚トンネルを出て唐丹駅を出てすぐ熊の木トンネルに入るまでの550メートルの間と、熊の木のトンネルを出て市境の尾根を突き抜ける鍬台トンネル280メートルの間だけしかない。

このわずか830メートルの間に、見える湾内の岬では、まず港の向うに松のような木々を載せた岩島が苫ノ鼻である。

その苫ノ鼻の背後に遠く見えるのが湾口にあたる蒜島。

仏ヶ崎は苫ノ鼻の左手に飛び出しているのだが、地理院地図での仏ヶ崎の表記は、その出っ張りの南端ではなくて、東に向いてしゃくり上げたようなところにつけられているので、厳密にいうと苫ノ鼻の側からは見えない。

ここも、当初計画では唐丹漁港と独自に入江のある花露辺(けろべ)まで行って、仏ヶ崎の正面から見る予定だったのだが…。
三陸鉄道南リアス線の車窓からは、唐丹湾はあっという間に通り過ぎてしまう。

岩手県閉伊郡の山田町・大槌町とともに釜石市域までは旧盛岡藩の領域であったが、同じ釜石でもその南端に位置する旧唐丹村だけは、岩手県気仙郡となっていて、伊達藩に属していた。
こうした線引きは、どこでもやっかいなものだが、ここではまた陸奥の国の遠い歴史の格別さを思い起こさせてくれる。
▼国土地理院 「地理院地図」
39度12分0.60秒 141度53分34.72秒 39度12分0.24秒 141度52分10.21秒




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