443 鍬ヶ崎=宮古市日立浜町(岩手県)有名な観光地浄土ヶ浜も実は岬でした
かつてここを初めて訪れたときの、観光地浄土ヶ浜の第一印象は、芳しいものではなかった。石の敷き詰められた浜辺の奥に、レストハウスがあって、そこから大音量で変な歌が流し続けられており、およそ“浄土”という雰囲気ではなかった。
“そうすれば客が寄ってくるだろう”という発想自体が、極めて不可解であるが、こういう例は、全国各地の観光地に多くあって、犬吠崎の項でもちょっとだけふれた。いまだに、こうした一部観光業者による暴力的で一方的な雰囲気を壊す“環境破壊”は、なかなか終息してはいない。仮にも“国立公園”ですよ。「観光協会」とかでは、そういうことをなにも考慮したり注意したりしないのであろうか。
浄土ヶ浜は、「浜」のほうに着目した命名になっているが、ここも景観の売りは「岬そのもの」なのだ。岩のでこぼこが連続する小さな尾根が、半分海に沈んだような形で南東に向かって伸びており、館ヶ崎ととともに、これまた小さな無名の岬を二つあわせた浄土ヶ浜全体を、包み込むようになっている。
なぜか国土地理院の地図には表示されていない(これはどう考えてもミスではないか。とくに「電子国土」のデータは、ちょっと古いような印象もある)が、この一帯が「鍬ヶ崎」という地名なのである。浄土ヶ浜の「岬」こそがその鍬ヶ崎という岬であると考えるに、なんの不都合もないように思われる。
そこで、ここはでんでんむしの独断で、一項目に数えることにした。
もともと、「鍬ヶ崎」の名は、この辺りではかなり広範囲に使われている。それだけ、由緒のある名前だと考えられる。
浄土ヶ浜のところだけではなく、市場のある港に面した古い町には鍬ヶ崎仲町、鍬ヶ崎上町、鍬ヶ崎下町、北に続く海岸線にも姉ヶ崎の手前までが崎鍬ヶ崎と、広範囲にわたって「鍬ヶ崎」を冠した地名が分布しているのである。
単純な思いつきだが、鍬ヶ崎の名の由来は、この岬が畑を耕しならす鍬のように見える、ということではないだろうか。
だいたい命名は単純なところから発想されることが多く、浄土ヶ浜にしても、白い石を踏みしめて歩けば、カラコロカサコソと骨でも踏んでいるかのような音を立てる。というと、賽の河原のようでもあるが、白い岩崖と水が揃えば、浄土のようなイメージを思い浮かべるのは自然なのであろう。
観光バスが一台停まっていて、乗客が記念撮影をしている、その後ろが白い塀に囲まれている。ここが、昔にレストハウスのあったところで、聞けばこの工事もそのレストハウスの建て替えなのだという。場所といいほかに店などなにもないことといい、ここは公のものなのだろうか。
建物を建て替えたら、ぜひ経営のセンスも建て替えてほしい。
浜からは、南の館ヶ崎が望める。また、北側の岩と岩との間には、日出島が見える。
北リアス海岸に共通することだが、アカマツの森がなんとも美しい。
前回、どこをどう通って行ったのか、部分の記憶がもうはっきりしないのだが、今回は浄土ヶ浜の北の影の上から、蛸の浜や砂島のある断崖絶壁の景色も眺めることができた。
大きなアカマツの間にそそり立つ岩壁は、まさしくここから先が隆起によって盛り上がった陸地であることを伝えている。
標高70〜90メートルくらいのところを、浄土ヶ浜自然歩道が通っている、と地図には表示がある。人が歩く程度の道は、海岸に沿って姉ヶ崎まであるらしいが、車が通れる道はない。
39度39分0.94秒 141度59分2.94秒




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