「長」と「万」は、嘉字として選ばれたものだろうか。

向うに平べったく伸びているのは、蕨島の沖合にある桂島・前島という小島で、そのさらに奥にあるのは長島町に属する獅子島であろう。


長島がすぐ近くに見える岬の北側は岩礁が取り巻いているが、南の内側は堤防があり、昔は水道だったところを、上を島を繋ぐ道路が走る潮受堤防で締め切って、港ができている。
その内側は、干拓地を貫く多くの川のひとつが流れ、のどかな風景をつくっている。しかし、のどかなだけで暮らしは成り立たない。


明治からの合併で「出水」と名乗るようになったこの市は、近年も周辺の町を取り込んで、大きな市域をもつようになったが、実はやはりその面積の3分の2近くは山地である。南部には標高1000メートルを越える出水山地があり、九州新幹線はその下を長いトンネルで抜けている。
干拓地は確かに広いが、農業や養鶏だけではやっていけない。
肥薩おれんじ鉄道の南側など、干拓地ではない場所に工業団地をつくり、企業を誘致してきた。
二三日前、たまたま「出水」の名と地図がNHKの9時のニュースで、流れた。おや、なんだろうと思ってみると、出水市の誘致した企業のひとつパイオニアが、工場を閉鎖する事態に追い込まれ、533人が職を失ったという。けれども、県外への再就職を希望する人はその1割程度だという。
パイオニアの場合は、プラズマディスプレイ事業の打ち切りによるもので、結局事業の買手が見つからず、国内の3工場すべてを精算する。同じ工業団地のNECも、生産調整かなにかでこれと前後してさっさと撤退を決めたという。これも市場原理主義では当然の結末ということになるのだろう。
一時期、地域活性化の切り札のようにいわれ、どこの自治体も一生懸命にやってきた工場誘致の結末は、あまりにもあっけない。
工場を移植してもしょせん借り物で、地場に根ざした産業ではないから、その程度のことは覚悟すべきだったのだが、なんとか自分の生まれ育った地元で働きたいという、人々の素朴な願いをかなえる方策としては、これもダメだということだけはわかった。



出水市の残る岬を目指して、蕨島をつなぐ堤防から坂道を登る。ここからは道はかなり高いところを走るようになっていく。
その高いところから眺める長万崎は、天草の島を背景にまこと堂々としていて、長く万年先までも、変わらないように見えるが…。
▼国土地理院 「地理院地図」
32度7分37.78秒 130度15分44.73秒

ラベル:鹿児島県

