2008年06月07日

272 恵比須崎=水俣市袋(熊本県)肥薩・熊本と鹿児島の境に流れる境川の北で

 地名に対する思い入れや印象というのは、まだ一度も訪れたことのない場所であっても、あるものである。ここ「水俣」は、とくにそれが強いところだった。
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 恵比須崎。なんとも美しい岬である。
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 平凡な形容で、よく“絵に描いたような”というのは、こういうことなのだろう。こどもが空想で絵を描くときには、その最も典型的な要素がすべて取り入れられる。その方式でいくと、岬といえば白い灯台があり、岩場があり、その先に小島があり、崖には白い波が打ち寄せる…そんな光景を思い浮かべる人は少なくないだろう。だが、この岬には、そのどれもないのだ。
 それに、この海の色はどうだろう…と、しばし見とれてしまう。
 恵比須崎は、鋭く切れ込んだ長い入江の先にあり、反対側にも同じように美しい出っ張りがあるが、そこには名前がついていない。
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 いったい、どういうときに名前がつき、なにが足りなくて名前がつかないのか? それも、岬めぐりの謎のひとつである。
 恵比須崎のあるずんぐりむっくりした出っ張りは、その懐に港と茂道という名の集落を抱え込んでいるが、そこへ至るまでには一山越えてこなければならなかった。
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 水俣市は、熊本県の南の端にある。八代でJR線から肥薩おれんじ鉄道の電車に乗り換えて、水俣駅で降りるが、この駅にはレンタサイクルがあった。しかも、電動自転車もある。これはうれしい。
 この日は、それを借りて、一日水俣の岬めぐりをすることにした。
 その手始め(いや足始めか)にやってきたのは、水俣最南部の袋というところである。
 水俣駅から一駅南だが、国道3号線はさすがにかなりの交通量である。いちおう歩道も確保されているので、なんとか走れるが、思いの外アップダウンがある。ぐねぐねしながら、山ひだのいくつも越えながら、この道を南下して、まずは県境までやってきた。
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 そう大きくはないが急な川があって、それが熊本県と鹿児島県を分けている。その名も「境川」。そのまんまである。
 この橋を越えると鹿児島県出水市(ちゃんと標識には鶴が飛んでいる)に入るのだが、今回はそっちには行かず、川に沿って海に向かって下って行く。
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 下ったところが、行き止まりの浜になっていて、河口の右手山すそに豪勢なつくりの家と庭があり、それに続く浜をプライベートビーチにしている。いったい、誰が、どんなことをしてこんな家や庭をこんなところに持てるのだろうかと、こういうときにはそんなことも思う。
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 ここからちょっと引き返して岬のある尾根を越えるのだが、さすがに電動自転車も役に立たない。というか、この電動自転車は、どこか調子が悪いのだろうか。前に愛媛の内子で借りて乗った電動自転車は、かなりの坂もすいすい登ったものだが…。一山か二山越えて、どうにか辿り着いたのが、恵比須崎をみると、その苦労が吹き飛んだような気がした。

▼国土地理院 「地理院地図」
32度10分27.56秒 130度21分50.73秒
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dendenmushi.gif九州地方(2008/04/19 訪問)

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ラベル:熊本県
posted by でんでんむし at 07:28| Comment(2) | TrackBack(1) | 岬めぐり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ついに水俣──確かによく知った地名なのに、何のイメージもない。オノレの出不精はさておいて、ふしぎな気分になる。いわば白紙だから、今回の変化にとんだ画像は興味深いです。“足”があったにしても精力的な一日でしたね。
なるほど恵比須崎は美しい。なぜこういう名がついたのかは図書館の郷土資料を見ればわかるのでしょうが、「名前がつく岬とつかない岬の差異はどこにあるのか」はなかなかの問題です。数メートル足りないために“山”と認知されない丘をめぐる映画『ウェールズの山』を思い出しました。
拙者が子どものころ遊んだ“三角山”は、いま思えば山でも丘でもないちょっと小高いだけの雑木林でした。そういう“山”はたいていの人の追憶の中にあるのでしょうね。
Posted by knaito57 at 2008年06月09日 08:07
@きれいきれいと言って、ただ通り過ぎてはいけない。だが、よくよく考えてみると、自分がそのことに関して何か役に立ったわけでも、なにをしたわけではない。しかし、こんなことがあっては絶対にいけない…。
 水俣の岬めぐりは、重たいです。
Posted by dendenmushi at 2008年06月11日 10:00
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