132 トモロ岬=賀茂郡東伊豆町稲取(静岡県)人が歩くことなんて想定外の道
当然ながら、伊豆急にはトンネルも多い。伊豆稲取と片瀬白田の駅の中間にある、黒根トンネルもけっこう長い。その上を135号線が並走している。
トモロ岬は、そのトンネルの途中にある。雨も上がったようで、どうやら傘をさす必要はなさそうだ。稲取高校の下から、岬が見える(はずの)国道トンネルのへんまで歩いて行くことにする。バスは今日はもうない。さすがにこのあたりでは車の通りがはんぱではない。カーブを右に左に渡るなんてことは不可能で、車に引っかけられないように避けるのに精いっぱいである。
国道トンネルの入口まで来たが、やっぱりここから海岸を望むのは無理なようだ。ほかに道もないので、「この下がトモロ岬だ」と思うしかないのである。
この尾根の松がいい。まるで水墨画かなにかで見る景色のようで…。
この尾根が海に落ちる下が岬なのだろう。
ということは、陸からは岬が見えないこういう場合、その岬の名前は陸の道を行く人がつけた名前ではなく、もっぱら船で海を行く人の視認目標として名前がついた、という仮説も成り立つ。
しかし、“トモロ岬”なんておかしな名前だ。これもアイヌ語源なのだろうか。やらせなど批判がいろいろあって中止に追い込まれたかつてのNHKの人気番組、あのナレーター…とは関係がないよなあ、と思ってふと気がついた。
このトンネルの名前が、“友路トンネル”。この“トモロ”だったのだ。
だが、漢字のほうを後から当てはめるということもよくあることで、ここも後からできた国道のトンネルに名前を付けるとき、カタカナの岬名の音に漢字を当てたとみるのが正解だろう。
このトンネルも長い。まさか、排気ガスで倒れるようなことはないだろうが、こういうところを歩くのは、あまりいい気分がしない。歩道は段差もなく、申し訳程度に白い線で30センチちょっとくらいの幅がついているのみ。それでも、バスなどこないので、とにかく歩くしかない。稲取まで引き返すか、片瀬白田までこのまま行くか…。
前進あるのみ!
トンネルを抜けると、急な斜面の途中を切り開いた135号線が、海岸に沿って高く走るが、海もよく見えないしあまり景色を探す余裕もない。土曜日の午後になって、車の量は増える一方なのだ。とにかく車が多くて、ほんとうに引っかけられないように注意しながら歩くだけで神経を使う。
これは誇張でもなんでもなく、何度も歩くこちらのリュックサックすれすれにかすめるように通り過ぎる車があった。意外なことに、観光バスが大胆な運転をする。おそらく、県外から来て初めての慣れない道といったこともあるだろう。
それよりもなによりも、だいたいこんな道を人が歩いているとは、運転者の誰もが想像していないのだろう。何台かの対向車は、こちらの姿を目に留めて、明らかに驚いたようにスピードを落としてくれた。
歩道も白い線を引いただけ。しかも、側溝のフタの上が人の歩く道だと決めているようだ。ところがそれも一部しかない。つまりは、道路の設計も管理も「まさか、こんなところを歩くヤツなんていねえよな」ということが前提になっている…そんな感じがする。
たとえば、こんなところで歩行者の事故が起こったとすると、やはり「(人が歩くなんてことは)想定していなかった、想定を超えていた」といわれることになるのだろうか。
やがて、遠く城ヶ崎が望めるようになって、どうやら無事に片瀬白田に辿り着いた。
34度47分6.36秒 139度3分28.07秒


この記事へのコメント
それにしても、ますます伊豆は奥が深いですね。
岬めぐりだからといって、必ずしも全部が全部その先端の岩の上に立つことは最終目的ではありません。遠くから岬を眺めるだけよしとする場合もあります。
海から見るのも、これも機会があればできるだけとは思うのですが、ごれがかなり限定されます。
どこかでリンクしていただいているとか?
情報がありましたら、教えていただきたいものですが…。
ほんとふしぎだ。